商談の記録を、次の受注につなげる残し方
前向きな反応とだけ書いたメモは2週間後に使えません。相手の言葉をそのまま残すなど記録すべき4項目、書かなくてよい情報、同じ相手の記録が複数回並んだときに効いてくる理由を整理しました。
商談の後、メモは取っているが後から見返していない。そういう方は多いと思います。
原因は、記録している内容が次の行動に使えないことにあります。何を残すかを変えるだけで、メモの価値は大きく変わります。
使われない商談メモの特徴
よくあるのはこういうものです。
9/26 A社訪問 ・製品説明を実施 ・価格について質問あり ・前向きな反応 ・次回、見積もり提出
一見きちんとしていますが、2週間後にこれを読んでも次の一手が決まりません。「前向きな反応」がどの程度なのか、価格の何を聞かれたのかが分からないからです。
残すべき4つの情報
1. 相手が使った言葉そのまま
要約せず、発言をそのまま残してください。
- 要約:「価格に懸念あり」
- そのまま:「正直、他社さんの見積もりが200万で来ていて、そこと比べると」
後者からは、競合がいること、金額の水準、比較検討の段階にあることが読み取れます。要約するとこの情報は消えます。
商談の記録で最も価値があるのは、相手の言葉づかいそのものです。
2. 誰が何に反応したか
複数人が同席した場合、誰が前向きで、誰が慎重かは次回の組み立てに直結します。
・情シスの田中さんがセキュリティを繰り返し確認(3回) ・部長は費用対効果の話で頷いていた
同じ内容でも、決裁者が気にしている点と、実務担当が気にしている点は違います。次回の提案では、両方に答える必要があります。
3. 決まっていないこと
商談では「決まったこと」より「決まっていないこと」のほうが重要です。
- 予算の枠は決まっているか
- 決裁者は誰か
- 導入時期の目処
- 比較している他社
これらが分からないまま提案を進めても、最後で止まります。分からなかった項目を明示的に残すと、次回のヒアリング項目がそのまま決まります。
【未確認】
・決裁者(部長までで決まるのか、その上か)
・予算の確保時期
・他社の提案内容の詳細
4. 相手の宿題と、こちらの宿題
【当方】9/30までに見積もり提出(田中様宛) 【先方】社内で利用部門にヒアリング、10/5頃に結果連絡
相手側の宿題も記録するのが要点です。期日が過ぎても連絡がなければ、こちらから確認する理由になります。「先日お話しされていた社内確認、いかがでしたか」と自然に連絡できます。
記録しなくてよいこと
逆に、書かなくてよいものもあります。
- 自分が説明した内容の詳細(資料を見れば分かります)
- 自分の主観的な手応え(「感触は良さそう」は次回使えません)
- 世間話の内容(関係構築上の情報を除く)
商談メモは自分の行動の記録ではなく、相手の情報の記録です。ここを取り違えると、読み返しても何も出てきません。
録音するかどうか
商談を録音すれば、発言をそのまま残せます。ただし必ず相手に伝えてください。
「議事録を作成したいので、録音させていただいてもよろしいでしょうか」
黙って録音していたことが後から分かると、それだけで関係が終わることがあります。法的な問題以前に、商売として避けるべきです。
伝えたうえで断られたら、素直にメモを取ってください。断られること自体はほとんどありません。
録音できた場合は、会話に集中できるという利点もあります。メモを取りながらだと、相手の表情や間の取り方を見逃します。
商談メモの型
■ 日時/訪問先/同席者(先方・当方)
【相手の発言(そのまま)】
・「〜」(誰の発言か)
・「〜」
【反応の温度差】
・〇〇さん:
・〇〇さん:
【未確認のこと】
・
【宿題】
| 誰が | 何を | いつまでに |
|------|------|-----------|
【次回】
溜まると効いてくる
商談メモの価値は、同じ相手との複数回の記録が並んだときに出ます。
- 初回で「予算は未定」だったものが、3回目で「今期中に確保」に変わった
- 毎回セキュリティの話が出る
- 決裁者の名前が途中から変わった
こうした変化は、1回分のメモからは見えません。同じ形式で残し続けることが前提になります。
だからこそ、記録の負担は軽いほうがよいのです。毎回30分かかる方式は続きません。録音と自動文字起こしを使うにせよ、手書きにせよ、続けられる方法を選ぶことが最も重要です。
まとめ
- メモが読み返されない原因は、記録した内容が次の行動に使えないこと
- 相手が使った言葉をそのまま残す。要約すると競合や金額の水準が消える
- 同席者の誰が前向きで誰が慎重かを分けて記録する
- 決まったことより、決まっていないことを明示的に残す
- こちらの宿題だけでなく、相手側の宿題と期日も書いておく
- 自分の説明の詳細や主観的な手応えは書かなくてよい
- 録音するなら、必ず相手に伝えてから行う
同じ形式で残し続けたときに、はじめて相手の変化が見えてきます。