議事録の保管期間はどれくらいが適切か
株主総会や取締役会の議事録は本店10年など法令の定めがあり、日常の議事録は社内で決めます。参照可能性・紛争リスク・保持リスクという3つの判断材料と、音声データを短期間で削除する考え方を整理しました。
議事録をいつまで保管すべきか。種類によって答えが違います。
法令で期間が定められているものと、社内の判断に委ねられるものがあり、この区別がついていないと「とりあえず全部残す」ことになります。
以下は一般的な整理です。具体的な保管期間の判断は、法務部門や専門家にご確認ください。
法令で定めがあるもの
一部の議事録は、会社法などで作成と保存が義務づけられています。
代表的なものを挙げます。
| 種類 | 一般的な保存期間 |
|---|---|
| 株主総会議事録 | 本店10年(支店に写し5年) |
| 取締役会議事録 | 本店10年(支店に写し5年) |
| 監査役会議事録 | 10年 |
これらは法定の記載事項もあり、形式が定められています。通常の会議の議事録とはまったく別のものとして扱ってください。
医療、金融、建設など、業法で記録の保存が義務づけられている業種もあります。自社の業種に固有の定めがないかを確認しておく必要があります。
社内判断で決めるもの
日常の会議の議事録には、法令上の一律の定めはありません。組織として決めることになります。
判断材料は3つです。
1. 後から参照する可能性
- 定例会議の進捗共有 → 数か月で参照されなくなることが多い
- 意思決定の記録 → 数年後に「なぜこう決めたか」を問われる
- 仕様や設計の決定 → 製品が使われている限り必要
決定の理由が書かれた議事録ほど、長く価値があります。
2. 紛争になる可能性
取引先との合意事項を含む議事録は、後から争いになる可能性を考えて残します。
契約に関わる打ち合わせの記録は、契約書の保存期間に合わせるという考え方が分かりやすいでしょう。
3. 保持し続けるリスク
見落とされがちですが、残すこと自体にもリスクがあります。
- 個人情報を含む記録は、保持している限り管理責任が続く
- 情報漏えいが起きたとき、被害の範囲が広がる
- 開示請求や証拠保全の対象になりうる
必要がなくなった記録を持ち続ける理由はありません。
期間の決め方の例
一つの考え方として、種類別に分ける方法があります。
| 種類 | 期間の目安 |
|---|---|
| 法定のもの | 法令に従う |
| 契約・取引に関わるもの | 契約の保存期間に合わせる |
| 意思決定の記録 | 3〜5年 |
| 定例の進捗共有 | 1年 |
| 個人情報を含むもの | 目的達成後、可能な限り短く |
重要なのは期間の長短より、決まっていることです。決まっていないと、実際には「消されないまま無限に残る」状態になります。
音声データは別に考える
議事録と、その元になった録音は分けて扱ってください。
議事録が完成すれば、多くの場合、音声は不要になります。
音声を残す理由があるか
- 「言った・言わない」の確認に備える → 一定期間は有効
- 議事録の内容に疑義が生じたとき → 同上
- それ以外 → 残す理由は薄い
音声を残すリスク
- 議事録に書かなかった発言まで含まれている
- 個人の声という個人情報にあたる
- 容量が大きく、管理場所を圧迫する
議事録に残さないと判断した内容が、音声にはそのまま残っているという点は特に意識してください。「議事録には書かなかった雑談」が音声には入っています。
多くの場合、議事録完成後、短期間で削除するのが適切です。
外部サービスに預けた場合
文字起こしサービスを使った場合、サービス側の保存期間も確認が必要です。
自社で削除しても、サービス側に残っていれば管理は終わっていません。
- 処理後に削除されるのか
- 保存される場合、期間はどれくらいか
- 自分で削除できるのか
自社の保管ルールと、使っているサービスの仕様が食い違っていないかを確認してください。「社内では1か月で削除」と決めていても、サービス側に無期限で残っていては意味がありません。
運用として決めておくこと
- 種類ごとの保管期間
- 保管場所(どこに置くか、散らばらせない)
- 削除の担当と時期(誰が、いつ消すか)
- 音声データの扱い(議事録完成後の削除)
- 使用してよい外部サービス
とくに3つ目が実務では効きます。「期間を決めた」だけでは消えません。誰がいつ消すかまで決めて、初めて運用になります。
まとめ
- 法定のもの(株主総会・取締役会など)は法令に従う
- 日常の議事録は社内で期間を決める
- 判断材料は「参照可能性」「紛争リスク」「保持リスク」
- 音声データは議事録と分けて、短期間で削除
- 外部サービスの保存仕様も確認する
- 期間より、誰がいつ消すかを決めることが重要
「念のため残しておく」の積み重ねが、管理できない記録の山を作ります。必要な期間を決めて、来たら消す。それが最も安全な運用です。
なお、法定の保存義務や業法上の要件については、法務部門や専門家にご確認ください。