音声データをクラウドに上げる前に確認すべきこと
文字起こしサービスに音声を渡す前に確かめたい4点と、長い利用規約から該当箇所を見つけるための検索語、会議の種類ごとに求める水準を変える考え方、社内で決めておくとよいことを整理しました。
文字起こしサービスを使うとき、音声データは外部のサーバーに送られます。
社内の定例会議なら気にしなくてよいかもしれません。しかし商談、面接、人事、法務に関わる会議では、確認せずに使うべきではありません。
何を確認すればよいかを整理します。
確認すべき4点
1. 処理後に削除されるか
もっとも重要な点です。サービスによって扱いが分かれます。
| 方式 | 特徴 |
|---|---|
| 処理後に削除 | サーバーに残らない。流出のしようがない |
| 一定期間保存 | 再ダウンロードできる。期間中はリスクが残る |
| 無期限保存 | 過去の議事録を検索できる。管理の責任が続く |
どれが正しいかは用途によります。 過去の議事録を検索したい組織なら保存型が便利ですし、機密性を重視するなら削除型が適しています。
問題なのは、どちらか分からないまま使うことです。
2. 保存される場合、どこに・どれくらいか
保存型の場合、確認すべきは2つです。
- 保存期間(30日、1年、無期限など)
- 保存先の国(国内か、海外か)
海外のサーバーに保存される場合、その国の法制度が適用されます。取引先の情報を含む音声を海外に置くことについて、社内規程で制限がある組織もあります。
3. AIの学習に使われるか
近年とくに重要になった点です。
利用規約に「サービス改善のためにデータを使用することがあります」といった記載がある場合、自社の会議内容がモデルの学習に使われる可能性があります。
多くの事業者向けサービスは学習に使わないと明記していますが、無料サービスでは明記されていないことがあります。
4. 誰がアクセスできるか
サービス提供者の従業員が音声を閲覧できる設計かどうかです。
品質改善のために人が確認する運用をしているサービスもあります。それ自体は珍しくありませんが、機密性の高い会議では避けたい場合があります。
規約のどこを読むか
利用規約とプライバシーポリシーは長いので、探す場所を絞ります。
検索する言葉
- 「保存」「保管」「削除」
- 「第三者提供」
- 「学習」「機械学習」「モデル」
- 「保存期間」「retention」
この4つで検索して該当箇所を読めば、たいてい必要な情報にたどり着きます。
記載がない場合
記載がないことは「保存しない」を意味しません。問い合わせてください。 明確に答えられないサービスは、機密性の高い用途には向きません。
問い合わせの文面は簡単で構いません。
「アップロードした音声データの保存期間と、AIの学習への利用の有無について教えてください」
回答が得られない、または曖昧な場合、それ自体が判断材料になります。
会議の種類ごとの考え方
すべての会議に同じ基準を適用する必要はありません。
| 会議の種類 | 求められる水準 |
|---|---|
| 社内の定例・進捗共有 | 通常のサービスで問題ないことが多い |
| 商談・取引先との会議 | 相手の情報を含む。保存期間の確認を |
| 採用面接 | 候補者の個人情報。削除型が望ましい |
| 人事・評価 | 同上。社内規程の確認も |
| 法務・係争に関わる | 外部に出さない判断もありうる |
相手の情報が含まれるかどうかが一つの分かれ目です。自社だけの会議と、他者の発言を含む会議では、扱いの慎重さが変わります。
社内で決めておくとよいこと
個人の判断に任せると、人によってばらつきます。次を決めておくと迷いがなくなります。
- 使用してよいサービス(許可制にする)
- 会議の種類ごとの取り扱い基準
- 音声データの保管期間
- 相手への告知方法(定型文を用意)
とくに1つ目が重要です。各自が好きなサービスにアップロードしている状態は、実質的に管理されていないのと同じです。
そもそも預けない選択
機密性が極めて高い会議では、外部に出さないという判断も現実的です。
- その場でメモを取る
- 録音はするが文字起こしは自分で行う
- ローカルで動作する文字起こしソフトを使う
手間はかかりますが、外に出ていないものは漏れません。すべての会議で効率を優先する必要はありません。
議事録ができたら音声は消す
見落とされがちですが、手元の音声データも管理対象です。
議事録が完成すれば、多くの場合、音声は不要になります。PCやクラウドストレージに残したまま忘れられている録音は、それ自体がリスクです。
用が済んだら消す。これが最も確実で、最も実行されていない対策です。
まとめ
確認すべきは4点です。
- 処理後に削除されるか
- 保存される場合、期間と保存先
- AIの学習に使われるか
- 誰がアクセスできるか
規約に記載がなければ問い合わせてください。答えられないサービスは、それ自体が答えです。
そして、会議の種類によって基準を変えること。すべてに最高水準を求めると業務が回りませんし、すべてを同じ緩さで扱うと事故が起きます。
なお、具体的な社内規程や法令適合の判断については、法務部門や専門家にご確認ください。