議事録に書いてはいけないこと
議事録は詳しく書くほどよいわけではありません。評価や印象、未確定の情報など残すと後で問題になる5つの類型と、逆に省くと困る決定の理由や反対意見の書き方、提出前に3分で削る手順を整理しました。
議事録は詳しく書けば書くほどよい、というものではありません。
書いたことで問題が生じる類の記述があります。しかも書いている本人は、親切のつもりでいることがほとんどです。
1. 発言者の評価や印象
もっとも多い失敗です。
- 「〇〇さんは理解していない様子だった」
- 「消極的な発言が目立った」
- 「反対意見が多く、まとまらなかった」
これらは事実ではなく書き手の解釈です。同じ会議に出ていた別の人が読めば、「そうは思わなかった」となる可能性があります。
議事録は関係者に配布され、想定外の人の目にも触れます。評価的な記述は、書かれた本人に見られたときに必ず問題になります。
書くなら事実に留めてください。
- 悪い例:「〇〇さんは懐疑的だった」
- 良い例:「〇〇さんから、導入コストについて確認があった」
2. 未確定の情報を確定のように書く
- 「来期は予算が倍増する見込み」
- 「A社との契約はほぼ決まり」
- 「〇〇さんが異動する予定」
会議で話に出ただけの見通しを、議事録に書くと確定情報として一人歩きします。特に人事や取引に関することは、伝聞のまま広まると実害が出ます。
記録するなら、誰の発言としてそう述べられたのかを明記してください。
「田中部長より、来期予算について増額の可能性が示された(確定ではない)」
3. 個人の事情
- 健康状態
- 家庭の事情
- 待遇や評価に関すること
会議中に話題に出ることはありますが、議事録に残す必要があるかは別です。特に本人が同席していない場面で出た話は、慎重に扱うべきです。
必要な場合は、業務上の影響だけを書きます。
- 悪い例:「〇〇さんは治療のため月曜は休み」
- 良い例:「〇〇さんは月曜不在のため、月曜の作業は△△さんが担当」
4. 断定的な法的・専門的判断
- 「これは法的に問題ない」
- 「この方式なら特許に抵触しない」
- 「税務上は経費として処理できる」
会議の場で誰かがそう言ったとしても、議事録に断定として残すと、社内で「確認済み」の扱いになります。後から誤りだと分かったとき、その議事録が判断の根拠にされていたことが問題になります。
こう書き分けてください。
「法務部への確認が必要(〇〇さんが9/30までに照会)」
つまり確認事項として残すということです。
5. 議論の生々しいやりとり
対立した議論をそのまま書き起こすと、読み返したときに感情が残ります。
- 「それは前にも言いましたよね」
- 「そもそもの前提が違うのでは」
論点は残し、応酬は残さないのが原則です。
「前提条件の認識に相違があり、次回までに整理することとした」
これで十分に機能します。
逆に、書かなすぎも問題になる
削ればよいという話ではありません。残さないと後で困るものがあります。
- 決定の理由(前提が変わったときの再検討に必要)
- 反対意見があった事実(意見が出なかったのか、出たが採用しなかったのかは大きな違い)
- 確認が必要な事項(誰が何を確認するのか)
反対意見については、内容と、それをどう扱ったかを書いてください。誰が言ったかを書かない選択もあります。
「コスト面の懸念が挙がったが、初年度のみの負担であることを確認し、原案どおりとした」
判断に迷ったときの基準
書くべきか迷ったら、次を考えてください。
これが、書かれた本人に読まれたらどうか
これが、1年後に第三者に読まれたらどうか
議事録は、社内調査、監査、場合によっては訴訟の場面で読まれることがあります。そのときに読まれて困る主観は、最初から書かないのが安全です。
削るのは後からでもよい
会議中は、判断せずに書き留めておいて構いません。提出前に3分だけ読み返し、削るという手順にすれば、会議中に迷って手が止まることもありません。
AI議事録ツールを使う場合も同じです。自動生成された議事録には、発言がそのまま残ることがあります。そのまま配布せず、目を通して削る工程は残してください。
出力の精度が上がるほど、この確認を省きたくなりますが、何を残さないかは人間が決めるべき判断です。
まとめ
- 発言者の評価や印象は書き手の解釈でしかない。事実に留める
- 未確定の見通しは、誰の発言としてそう述べられたのかを明記する
- 個人の事情は、業務上の影響だけを書く
- 法的・専門的な判断は断定せず、確認事項として残す
- 対立した議論は、論点は残し、応酬は残さない
- 逆に、決定の理由・反対意見があった事実・確認が必要な事項は残さないと後で困る
- 会議中は判断せずに書き留め、提出前に3分だけ読み返して削る
迷ったときは、書かれた本人に読まれたらどうか、1年後に第三者に読まれたらどうかを考えてください。