「言った・言わない」を防ぐ議事録の残し方
食い違いは記録の不足ではなく確認の不足から起きます。終了5分前に数字を読み上げる確認、期限を切って異議を求める一文、決まらなかったことも書く記録の作法など、防ぐ手順を整理しました。
「そんなことは言っていない」「いや、確かにそう聞いた」
こうした食い違いは、記録がないから起きるとは限りません。記録はあっても、双方が確認していないために起きることのほうが多いのです。
議事録があっても、相手がそれを読んでいなければ、認識は揃いません。
順番が逆になっている
多くの場合、こういう流れになっています。
- 会議で話す
- 後から議事録を作る
- 送る
- (相手は読まない)
- 食い違いが発覚する
問題は3と4の間です。送っただけでは合意になりません。
有効な順番はこうです。
- 会議で話す
- その場で確認する
- 議事録を作って送る
- 期限を切って異議を求める
2が入るだけで、食い違いの大半は消えます。
その場での確認
終了5分前に、決まったことを読み上げます。
「では確認させてください。単価は3,000円、納期は12月末、初回は50個。この3点でよろしいでしょうか」
箇条書きで、数字を含めて読み上げるのが要点です。
「だいたいそんな感じで」ではなく、具体的な数字と日付を口に出す。ここで認識がずれていれば、その場で判明します。
相手に言わせる方法
もう一段確実にするなら、相手に確認してもらう言い方があります。
「認識に相違がないか、確認いただけますか」
自分が読み上げると、相手は聞き流しがちです。相手に確認を求めると、自分の言葉で考え直すことになります。
議事録を送るときの一文
送信時に、こう添えてください。
本日の内容をまとめました。相違がございましたら、〇日までにご指摘いただけますと幸いです。ご指摘がない場合、この内容で認識を合わせたものとさせていただきます。
期限を切ることが重要です。「ご確認ください」だけでは、確認されないまま時間が過ぎます。
期限を過ぎれば「異議がなかった」という事実が残ります。これは記録そのものより強い意味を持ちます。
記録の書き方
数字と日付を必ず入れる
- 曖昧:「価格は前回より少し下げる」
- 明確:「価格を3,200円から3,000円に変更する」
「少し」「なるべく早く」「前向きに」といった語は、後から解釈が分かれます。数値化できるものは数値で書いてください。
発言者を明示する
誰が言ったかを残すと、後から経緯を追えます。
- 「〇〇について、田中様より△△との説明があった」
とくに条件や前提に関する発言は、発言者とセットで残す価値があります。
決まらなかったことも書く
食い違いは、決まったことより決まっていないことで起きやすいものです。
【継続検討】
・保守費用の扱い(次回までに双方で持ち帰り)
「その件は決まっていない」と明記されていれば、後から「決まったはずだ」とはなりません。
曖昧な返事を明確化しない
相手が「検討します」と言ったとき、それを「前向きに検討いただける」と書かないでください。言われたとおりに書きます。
- 記録すべき:「〇〇については社内で検討するとのこと」
- 書いてはいけない:「〇〇の導入に前向きな意向」
自分に都合よく解釈した記録は、食い違いの原因そのものになります。
録音は保険であって解決策ではない
録音があれば事実は確認できます。しかし、
- 録音を聞き返す時点で、関係は悪化しています
- 「録音があります」と持ち出すこと自体が対立を意味します
- 録音していても、相手が知らなければ使いにくい
録音の価値は、争いを解決することより自分の記憶を正確に保つことにあります。
食い違いを防ぐのは、録音ではなくその場の確認です。
それでも食い違ったとき
起きてしまった場合は、こう進めます。
1. どちらが正しいかを争わない
記憶違いは誰にでもあります。相手を追い詰めても、失うものが多くなります。
2. 記録を確認する
議事録と、送信時に異議がなかった事実を確認します。
3. これからどうするかを決める
過去の是非より、今後の扱いを決めるほうが建設的です。
4. 再発を防ぐ
以後の会議では、その場での読み上げ確認を必ず行う。同じ相手との取引なら、この運用を提案してもよいでしょう。
まとめ
- 議事録を送るだけでは合意にならない
- 終了5分前に読み上げて確認する
- 送信時に期限を切って異議を求める
- 数字・日付を明記し、曖昧な語を残さない
- 相手の発言を都合よく解釈しない
- 録音は保険であって、防止策ではない
食い違いは、記録の不足ではなく確認の不足から生まれます。5分の確認が、後の何時間もの説明を不要にします。