文字起こしと議事録は、何が違うのか
文字起こしは発言をそのまま文字にしたもの、議事録は決まったことを人に伝えるための文書です。混同すると2万字の全文が配布されることになります。役割の違いと、間の変換手順を整理しました。
「文字起こしができたから、議事録は完成」——ここが最もよくある誤解です。
この2つは別のものです。 混同すると、2万字の全文が会議の参加者に配布されることになります。誰も読みません。
定義
| 文字起こし | 議事録 | |
|---|---|---|
| 中身 | 発言をそのまま文字にしたもの | 決まったこととやることをまとめた文書 |
| 目的 | 記録を残す | 人に伝える・後から参照する |
| 1時間の会議で | 2万字前後 | 400〜800字 |
| 読む人 | 基本的に作成者だけ | 参加者、欠席者、関係部署 |
| 正確さの意味 | 発言に忠実であること | 決定に誤りがないこと |
文字起こしは素材、議事録は成果物です。料理でいえば、文字起こしは切った食材で、議事録は皿に盛られたものにあたります。
なぜ全文では機能しないのか
1時間の会議を文字にすると2万字前後になります。文庫本にして40ページほどです。
そこには次のものが全部入っています。
- 言い直し、言いよどみ(「えー」「あの」「まあ」)
- 雑談、前置き、世間話
- 結論に至らなかった議論
- 途中で否定された案
- 同じ内容の繰り返し
否定された案がそのまま残っているのが、特に危険です。読み手が途中だけ見て「これで決まったのか」と誤解します。
議事録は「何が決まったか」を伝えるためのものなので、決まらなかったことは基本的に書きません(保留として明示する場合を除く)。
文字起こしから議事録にする
拾うもの
この3つで、ほとんどの議事録は成立します。
- 決定事項 — 何が決まったか
- やること — 誰が、何を、いつまでに
- 保留 — 決まらなかったこと、次に持ち越すこと
手がかりになる言葉
全文を読む必要はありません。次の言葉の周辺に、決定とタスクが集まっています。
| 言葉 | 何が近くにあるか |
|---|---|
| 「では」「じゃあ」 | 決定 |
| 「〜でいきましょう」 | 決定 |
| 「〜しておきます」 | タスク(自分から) |
| 「〜お願いします」 | タスク(他人へ) |
| 「〜までに」 | 期限 |
| 「一旦」「いったん保留」 | 保留 |
検索して、その前後を読むだけで足ります。
書き方
【決定事項】
・
【やること】
| 誰が | 何を | いつまでに |
|---|---|---|
【保留】
・
やることは表にしてください。 箇条書きだと「誰が」が抜けます。表なら、空欄が目立つので埋めざるを得ません。
文字起こしを残すべき場合
議事録ができたら文字起こしは不要になることが多いのですが、残す価値がある場合もあります。
- 契約や金額の交渉(後から「言った・言わない」になりうる)
- 法定の記録が必要な会議(別途、形式に沿った議事録が要ります)
- インタビューや調査(発言そのものが分析対象)
- クレーム対応
逆に、通常の社内会議では議事録ができた時点で消して構いません。残っているものは、紛失や流出のリスクを持ち続けます。
AIを使う場合
音声を渡すと、文字起こしと要約の両方を作るサービスがあります。ただし要約と議事録も、厳密には別物です。
- 要約 — 話された内容を短くしたもの
- 議事録 — 決定とタスクを、後から参照できる形にしたもの
要約は「何が話されたか」を圧縮しますが、議事録に必要なのは「何が決まったか」です。話題の分量と重要度は一致しません。 30分議論して決まらなかったことより、最後の1分で決まったことのほうが重要です。
やることの抽出まで行うサービスなら、議事録に近い形になります。それでも固有名詞の誤変換だけは人が直してください。社内の略語や商品名は、どのサービスでも苦手です。
まとめ
- 文字起こしは素材、議事録は成果物
- 1時間の会議で、文字起こしは2万字、議事録は400〜800字
- 全文には否定された案も含まれる。そのまま配ると誤解を生む
- 拾うのは決定・やること・保留の3つ
- 「では」「〜しておきます」「〜までに」の周辺を見れば足りる
- 通常の社内会議なら、議事録ができた時点で音声と全文は消してよい
文字起こしができた時点で、仕事はまだ半分です。ただし残りの半分は、手がかりの言葉さえ知っていれば数分で終わります。